2024.05.01

◇実践事例特集◇地域包括ケア実践事例:その人らしい[生]の全うをサポートするには~在宅療養を支援する医師から見た訪問入浴介護[地域在宅ケア時代]のなかで大きな役割認識を~

【実践事例特集】では、デベロ老人福祉研究所がこれまでの研修活動で発表された事例等を基に、改めて

    訪問入浴介護と照らし合わせてご紹介します。

                                                                 

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2010年(平成22年)11月28日(土)に開催しました第45回全国入浴福祉研修会の基調講演におきまして、「そ

の人らしい[生]の全うをサポートするには~在宅療養を支援する医師から見た訪問入浴介護 [地域在宅ケア時代]の

かで大きな役割認識を~と題し、日本プライマリ・ケア学会副会長 石橋クリニック院長、石橋 幸滋医師にご登

壇いただきました。今回はご講演内容より一部抜粋しご紹介させていただきます。

 

☆在宅ケアの基本的心構え☆

 在宅ケアを考える場合、その家族の歴史と一人ひとりの生きざまを考慮する必要があります。

 要介護者を取り巻く家族関係が、それまでギクシャクしてきて摩擦ばかりだったりすると、同居している家族に介護意欲が生まれない傾向があり、介護知識を身につけようとの気持ちも沸いてこないでしょう。 

 そうした家族は施設志向があり、介護の知識もないため不適切な対応を平気で行う、サービスを積極的に利用しようとしない、といった傾向があり、場合によっては、介護疲れで虐待に至ること珍しくありません。

 そのため、在宅ケアに関わる方は、本人と家族の要望と真意をしっかりと確認してゆく必要があるのです。

 在宅療養者を医師の立場で訪問していますと、健康上のさまざまな課題に突き当たります。

 厄介な皮膚疾患ですと、やはり皮膚科の専門医に診察を治療をお願いしなければなりませんし、入れ歯の噛み合わせ不良や嚥下障害があるなら、歯科医師に来てもらう必要が出てきます。

 関節疾患なら整形外科医の訪問が欠かせません。理学療法士の指導を受けると、もう少しは良くなるのだが、といった場合は訪問リハビリを依頼した方がいいでしょう。このほか、フットケアが必要な方など、さまざまなニーズが内在しています。

 ちなみに私は、リハビリテーション分野に訪問入浴サービスを位置づけると、もっと目的が明確になるのでは、とも考えています。入浴をしますと、身体が柔らかくなり、意欲も出てきますので、リハビリテーションの側面からも大きな利点があるのです。

 在宅療養者には、医療や看護、介護やリハビリ、歯の健康などや栄養指導、などさまざまな専門職が関わることで成立するわけですが、それぞれの専門職がチームケアのなかでの役割を認識しながら、当人とコミュニケーションをしながら生き甲斐も引き出し、「幸せな人生だった」と感じていただくことが究極の目的ではないでしょうか。そのためにも、在宅療養者の情報をしっかりと把握し、地域のケアチームのなかでの訪問入浴サービスの役割を認識しながら業務を行ってゆくことが期待されていると思います。

☆訪問入浴介護の役割とは☆

 最後に、私が在宅医療に携わってきたなかで感じてきた訪問入浴サービスの役割を整理して述べておきます。

①利用者一人ひとりの生き方でもある生活の質を高める

➁入浴して気持ちが良かった、というだけでなく、もっと奥深い満足度を上げる

➂精神的な安定をサポートする

➃家族負担を減らす

➄感染症を予防する

➅全身状態を確認できる利点をチームケアにつなげる

⑦利用者の生きる意欲を高める

⑧地域ケアチームの一員として、関係する会議に積極的に参加して、入浴の利点も訴える

⑨利用者の情報をしっかりと集めて把握する

⑩リハビリテーション的な効果を高め、そうした利点を地域の専門家にも発信する

⑪安全性を確保し、困難なケースにも対応できる技術力を高める

⑫ケアチームの一員としての自覚を深める

⑬利用者を総合的にケアしてゆくチームの一員としての責務を自覚する

 などです。

ぜひ、訪問入浴介護に従事されている皆さまには、医療関係者とも連携を深めながら、地域ケアチームのなかに飛び込んでゆき、存在感を示すことを期待しています。

 

 ※出典:入浴福祉研究第43号(2010年(平成22年)4月30日発行 編集・発行所:デベロ老人福祉研究所/日本入浴福祉研究会事務局

 

 

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ここでは、2020年に、24時間365日対応の在宅療養支援診療所を開設された杉山昂医師の著書「在宅医療の職分」

より内容をそのまま引用してご紹介させていただきます。

杉山医師は1989年静岡県で生まれ、早稲田大学を中退し医師を目指すため、鳥取大学医学部医学科に入学されます。

卒業後は精神科医として総合病院に勤務されますが、そこで高齢者医療の現状(病院における治療が終わり退院した

にもかかわらず、自宅で満足に暮らせるどころか病気を再発し病院に戻る再入院率の高さ)に危機感を抱き、自宅で

安心して暮らしていける医療の必要性を実感、診療所を開設され3年後には患者数が累計で650人を超えようとして

おり、在宅医療のニーズの高さを感じておられます。(著書「在宅医療の職分」杉山昂著/2023年幻冬舎より)

 

第二章 これからの高齢者医療は在宅医療が担っていく 在宅医は超高齢社会に突入した日本の救世主

❖医療を必要とする高齢者の受け皿に

 病院における慢性的な人手不足や機能別再編に伴う別途数削減、外来でのADL低下や診療科別体制による通院負担増といった問題は、日本における病院や通院医療の限界のあらわれといえます。特に急性期治療を終えた高齢患者が、回復期、慢性期に必要とする医療の提供と、終末期を迎える場所としての病院の機能は、国の医療費削減の方向性を鑑みても、今後も縮小の方針が変わることはないといえます。

 そこで、高齢者を取り巻く深刻な問題を解決する方策の一つとして注目されているのが、病院やクリニックなどの医療機関への通院が困難な患者に対し、自宅や施設で必要な医療やケアを提供する在宅医療です。これまで通院を前提とする外来と病院が担ってきた、終末期医療やケアの新たな受け皿となり得る医療の形です。

 具体的には以下のような医療やケアが含まれます。

[図3]在宅医療が担う医療・ケア

 

出典:厚生労働省「在宅医療をご存知ですか?」リーフレット

訪問診療:医師が患者の自宅や施設で診察や検査、クスリの処方、末期がんなど終末期の緩和ケアなどを行う

訪問看護:看護師が患者の自宅や施設で、医師の指示書に基づき点滴や採血、傷口の処置などの看護を行う

訪問によるリハビリテーション:在宅で生活していくための生活動作機能維持、向上のため、理学療法士や作業療法士などが訪問し、リハビリを行う

訪問栄養食事指導:患者宅を管理栄養士が訪問し、療養にあたって必要な栄養や食事の指導をしたり、食べやすい工夫をアドバイスしたりする

訪問薬剤管理:患者宅を薬局の薬剤師が訪問して、服薬に関する疑問に答えたり、きちんと服薬できるよう指導したり、服薬上の問題解決を行ったりする

訪問歯科診療:患者宅を歯科医師や歯科衛生士が訪問し、歯科治療や口腔ケアを行う

 訪問診療の頻度は原則月1回以上で、臨時対応が必要な場合は随時往診します。実際には、患者の病状により月1~2回、家族とも相談しながら訪問頻度を決めていきます。訪問の範囲(診療圏)は在宅診療クリニックから半径16kmを超えないことと定められています。

 主な診療内容としては、診察と薬の定期処方のほか、必要に応じて血液検査や尿検査、点滴や注射などで、病状により人工呼吸器や胃ろうの状態確認や管理を行うこともあります。また、末期のがん患者で積極的治療を望まない場合は、苦痛を取る緩和ケアが中心となり、鎮痛・鎮静薬などによる疼痛管理を行います。

 なお、薬局での薬の受け取りが困難な場合や、患者ないし家族に服薬指導が必要な場合は、在宅診療クリニックと薬局とで直接連絡を取り合い、訪問薬剤管理の体制を整えます。

 在宅医療は、長期入院ができず外来医療もADLの問題で続かない患者が、医療とのつながりを断ち切られないようにするための受け皿として発展してきました。複数の診療科を一人の在宅医が担当するため、通院に掛かる本人の負担減、また家族の付き添いの負担減にもなります。また、在宅医療は実際の生活の様子を踏まえた医療を行えることが強みといえます。薬の処方一つにしても、アドヒアランスを考慮し剤形や回数を決めることができるのは、患者にとっても大きなメリットと考えられます。何より、自分のことをよくわかってくれている、といった安心感は、良好な健康状態の維持向上にも間接的に寄与すると考えます。

 自宅での延命治療については、家族とも何度も話し合い悩みを解消している現状があります。できることなら住み慣れた場所で最期を迎えたいと望む人が多いことからも、在宅医療の延長として看取りも在宅で行える環境が整えば、そうした声に応えることができます。

 在宅医療を受けている患者は、もし自宅で亡くなった際にも在宅医による死亡診断書の発行が可能なため、不審死扱い、つまり事件性の可能性があるとして警察が介入するような事態を避けることができます。

 このように、在宅医療は増え続ける高齢者の医療の受け皿として大きな期待が寄せられています。

❖在宅医療の充実は国を挙げての取り組み

 病気の高齢者を自宅で看護、介護することは昔から家族あるいは知育ぐるみで行われてきましたが、それが医療政策の一つとして制度化され推進されるようになったのは、1992年の第2次医療法改正により、居宅が医療提供の場として位置づけられてからではないかと思われます。(居宅とは広義の住まいを指し、自宅のほか介護施設も含まれます)。これ以降、在宅医療における各種指導料や管理料、施設基準や評価制度などが創設され、いくたびかの制度改革を経て現在に至っています。2000年にが介護保険制度がスタートし、医療と介護の連携強化が図られるようになりました。

 2014年には「医療介護総合確保推進法」の成立を受け制度化された「地域医療構想」に基づき、その推進が国の重要施策の一つに位置づけられています。

 地域医療構想とは、超高齢社会にも堪え得る医療提供体制の構築を目指し、高齢化や医師不足など、地域医療に関する課題に対応するために策定された国の取り組みです。

[図4]在宅医療の推進に関する制度の変遷

 名前が示すとおり、地域医療構想のなかでは「地域に根差した医療体制」の構築が大きな柱の一つとなっており、在宅医療の推進はその実現に向けた重要な施策の一つに位置づけられているのです。

 この地域医療構想との車の両輪の関係にあるのが、「地域包括ケアシステム」と呼ばれる施策です。高齢者が安心して住み慣れた場所で過ごすにが、医療分野だけでなく介護をはじめ生活ぐるみで支援できる体制づくりが必要です。それが地域包括ケアシステムであり、地域医療構想と同時期に策定、推進されています。

 地域包括ケアシステムは医療や介護が必要な状態になっても可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保されるという考え方のもと、自治体ごとに計画を立て進められています。

 このシステムが完成すれば、高齢者を支えるさまざまな職種、例えば自治体の福祉担当や医療・介護従事者、また民間のサービス提供者を含め互いに協力し合い、地域ぐるみで高齢者に適切な医療や介護を提供し支えていけるというのが国の考えです。

 在宅医療は地域包括ケアシス手もを円滑に機能させるためのカギを握る存在ともいわれています。なぜなら在宅医療は介護と密接な関わりをもち、連携しながらサービスを提供していくことが求められるからです。病気を治す役割だけでなく、地域の高齢者が安心して暮らせるようサポートする役割を、多職種と協力しながら担っていくということです。

 

 ※出典:「在宅医療の職分」杉山昂著 2023年幻冬舎 p.38-44を引用

 

 

皆様におかれましても、自分たちの「地域の特性」を理解して事業の効率化を図ると共に、訪問入浴介護サービスの

力を最大限発揮していただきたく存じます。訪問入浴介護は在宅での看取りに関しても、その役割が期待されていま

す。参考として令和6年度より新設されました「看取り連携体制加算」について掲載しますのでご活用ください。

 

    令和6年度介護報酬改定 訪問入浴介護における看取り対応体制の評価    

 

【告示改正】

訪問入浴介護における看取り期の利用者へのサービス提供について、その対応や医師・訪問看護師等の多職種との

連携体制を推進する観点から、事業所の看取り対応体制の整備を評価する新たな加算を設ける。

 

【単位数】

<現行>        <改定後>

 なし    ▶     看取り連携体制加算64単位/回(新設)

※死亡日及び死亡日以前30日以下に限る。

 

【算定要件等】

〇利用基準 

イ 医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること。

ロ 看取り期における対応方針に基づき、利用者の状態又は家族の求めに応じ、介護職員、看護職員等から介護

録等利用者に関する記録を活用し行われるサービスについての説明を受け、同意した上でサービスを受けている者

(その家族等が説明を受け、同意した上でサービスを受けている者を含む。)であること。

〇事業所基準 

イ 病院、診療所又は訪問看護ステーション(以下「訪問看護ステーション」という。)との連携により、利用

の状態等に応じた対応ができる連絡体制を確保し、かつ、必要に応じて当該訪問看護ステーション等により訪問看

護等が提供されるよう訪問入浴介護を行う日時を当該訪問入浴ステーション等と調整していること。

ロ 看取り期における対応方針を定め、利用開始の際に、利用者又はその家族に対して、当該対応方針の内容を説

明し、同意を得ていること。

ハ 看取りに関する職員研修を行っていること。

 

 

 

 

訪問入浴介護のサービス時には、事前にバイタルチェックを行います。以下にバイタルサイン測定時の注意点を掲載

しますので、お役立てください。

 

出典;老年看護ぜんぶガイド 八島 妙子著(株)照林社 (P.112より引用)

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タイトルの下のタグ【実践事例特集】をクリックすると過去の記事の一覧がご覧いただけます。            

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訪問入浴介護は、3人(看護師、オペレーター、ヘルパー)1組で入浴介護を行うチームケアです。お互いの職種を

把握することはもちろん、性格や考え方を理解することは生産性とサービスの質の向上のために大変重要です。

 

 

▼訪問入浴サービスご案内(動画)

 

➡訪問入浴介護のご案内ページへ

 

 

『入浴』と『看護・介護』の力の集結!!訪問入浴介護サービスの力

訪問入浴介護のサービス提供時には、入浴介助に伴って様々な『付帯的なサービス』が行われています。

 

全身観察

身体の状況を確認する最大の機会

看護師を中心に褥瘡等の早期発見・予防など、あらゆる観点から確認します。

 

 

生活支援の側面
寝具等ベッド環境の整備
離床する際に、シーツ、枕カバーなどの交換が行えます。不衛生になりがちなベッド周りも清掃して、環境を整えることができます。

 

 

 

 

身体介護の側面
ご家族へのアドバイス
寝たきりである利用者への清潔な下着や着衣の交換はもちろんのこと、「スキンケア」や「体位の交換」といったご家族への適切なアドバイスも。

むくみや拘縮の緩和、リハビリ要素も

入浴中は温熱作用、浮力・粘性作用により関節も動きやすくなりますので、状況によりマッサージなどを行う場合もあります。

 

全身の整容と向き合う

入浴で清潔の保持はもちろんですが、洗顔、ひげそり(電気シェーバーにて)や爪切り(疾患のない爪)など、全身の整容を考えてサービスが実施されます。

 


移動入浴車デベロバスカは
今日も全国の各地域で活躍しています!

移動入浴車デベロバスカのご紹介 ~その機能と用途