2023.04.25

移動入浴車誕生と入浴福祉研究の歩み▶シリーズ第14回

移動入浴車誕生と入浴福祉研究の歩みでは、1972年の移動入浴車誕生からデベロが歩み続けた入浴福祉研究の歴史をご紹介いたします。

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筆者は1992年から約1年、訪問入浴介護のサービス提供をオペレーターとして行っていました。(1992年当時デベログループに介護サービ

を行う会社がありました。)筆者のデベロ入社は、1991年ですが、それ以前はホテル勤務であり、介護の仕事はもちろん、現場のことも

全く知りませんでした。訪問入浴の仕事を行う中でわかったことは人は突然亡くなるということです。昨日訪問入浴をサービス提供させて

いただいたおばあちゃんが今日亡くなった。昨日はあんなにお風呂に入って喜んでいたのに・・・。本当に寂しい思いをしたものです。

今回の全国入浴福祉研修会回顧録は、第55回の研修会における医療法人社団悠翔会、佐々木淳理事長の基調講演、『これからの医療と介護

カタチ』を取り上げます。

 

▼佐々木 淳先生の講演

 

高齢者の高血圧は病気なのですが、私たちの血圧というのは動脈に圧力がかかっていますが、動脈は歳と共に血管が固くなってきます。年齢と共に血管が固くなっていく病気ではなく老化です。ある一定の年齢になると血管が固い、固い血管に血液を通すために血圧は高くなる。だから年齢と共に高血圧の人は増えて、血圧も全体に上がっていきます。

脳梗塞とか心筋梗塞の既往がある人は、下の血圧を下げ過ぎると、再梗塞のリスクが高くなることも分かっています。血圧に対する考え方は、若者と高齢者は違うということです。そういう意味で言うと糖尿病も同じです。糖尿病は何の為に治療するかと言うと、高い血糖が血管を傷つけて動脈硬化を加速させるから血糖を高くしないようにしましょうということです。

80歳を過ぎて、しっかり糖尿病を治療した人が低血糖のリスクが高くて、実は認知症が進行しやすいとか、肺炎を起こしやすいことが分かってきて、3年前に糖尿病治療のガイドラインが変わりました。これまでは年齢に関係なく、ヘモグロビンA1cという数字を7より下げましょうと言っていたのですが、後期高齢者なら8でいいです。あるいは要介護の高齢者だったら、特に薬を使う場合は8.5でいいですよと基準を高くしています。

病気の数が増えてくると、多くの患者は臓器ごとに主治医がいますから、心臓の病気は循環器の医師、お腹の病気は消化器の医師、皮膚の病気は皮膚科の医師、それぞれの科から薬をもらっています、飲み合わせがあります。臓器ごとにしっかり治療をしていたら薬の飲みすぎになってしまうので、専門医一人ひとりに掛かるというのは止めた方がいいのです。病気が増えたらすべて診られる医師、掛かりつけ医と言いますけど、地域にそういう医師を見つけてその人にまとめて処方してもらう。治療すべきもの、治療しなくていいもの、飲み合わせが悪いもの、それをしっかり診ながら必要最小限の治療をし、必要な時に専門医に相談できるという体制を作っておいた方がより安全だと思います。

(途中省略)

次に大切なことは、看取りは医療ではないということです。命が短くなればなるほど、残りの命を延ばせる余地というのが小さくなってきます。医療というのは基本的に延命のために存在するものですから、人生の最後に近づくほど医療でできることは少なくなってきます。代わりにできるのは介護です。ケアをしっかり行って、身体がどんなに弱ったとしても最後まで生き切れる状況を作ることが大切ではないでしょうか。

高齢者と若者の機能の比較をしてみると、例えば高齢者の方が優れているものは沢山あります。調和性とか誠実、協調性です。若い人たちの方が一概に能力が高いという訳でもなさそうです。日本人は長生きになっていると言うよりは、年々若返っていると考えた方が良いでしょう。高齢者の意識も変化していて、歳と関係なく働き続けたいと言う人が何と8割もいるのです。実際、日本は高齢者の就労率もかなり高い。高齢者がこんなに沢山いて大変だと思いますけれど、この前提は65歳が高齢者ということなので、これを仮に75歳に変えますと働く人が増えます。

高齢者というと私たちはどうしても保護の対象というような形で、これまでずっと見てきたと思いますがそうではなく、その人たちの強みを生かし生活ができる環境を整えていくというのは、多分私たち自身が歳を取っていくうえで大事なことだと思いますし実際、歳をとっても社会に参加し続けられるという状況をしっかり作れなければ、多分この国のコミュニティ、社会保障の仕組みは維持できなくなると思います。ではどこから変えていくのかと言うと、なかなか難しいかと思いますが現場にいる私たちがきちんと実践をして発信していくということは、大事なことかと思います。

資料:入浴福祉研究第53号 2019年(平成31年)4月20日発行 掲載記事p.30-41より引用・抜粋

 


★令和3年度老人保健健康増進等事業「訪問入浴介護の実態に関する調査研究事業報告書」令和4年3月発行 P.87-89より抜粋

今後の方向性について

本調査において、訪問入浴介護を利用する方々は、要介護度が高く(平均要介護度4.05)、訪問診療や訪問看護、家族等による日常的な

医療的ケアを受けている方が大半を占め(49.3%)、契約が終了する最も多い理由が死亡によるところ(62.1%)である。

さらには全体の83.8%の事業所が看取り期にある利用者への訪問入浴介護サービス提供の実績があると答えており、他職種との主な連携

先では居宅介護支援事業所が最も多い(97.1%)のはもちろんであるが、それ以外では高い順に訪問看護事業所(91.1%)、主治医(か

かりつけ医)(70.6%)が挙げられている。

これらのことからも、訪問入浴介護は「在宅」で療養している「看取り期」の方が多く利用するサービスであるということも推察できる。

しかし、在宅看取り期にある利用者を訪問入浴介護だけで支えることは不可能である。そのため、それぞれの地域において社会資源とし

て何が存在し、どのように連携してその地域の方々を支えていけるかを充分検討する必要がある。今回の調査では訪問入浴介護に焦点を

あてて、あらゆる角度から各事業所の実態を把握してきたが、その事業所を支えているのもまた、その地域の「人」であることを決して

忘れてはならない。生産年齢人口の多い自治体においては、その労働者を確保することは比較的容易かもしれないが、日本国内のあらゆ

るところで生産年齢人口が減少する傾向にある。そういう意味ではサービスの量そのものを拡大、普及するというよりは、いかに介護需

要に応じた提供量を維持するか、を検討することが課題解決の糸口となるのではないかと考える。

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訪問入浴介護は、3人(看護師、オペレーター、ヘルパー)1組で入浴介護を行うチームケアです。お互いの職種を把握する

とはもちろん、性格や考え方を理解することは生産性とサービスの質の向上のために大変重要です。

 

 

▶訪問入浴介護とは

 

在宅において、自力で入浴が困難な方を介助し入浴の機会を提供するものです。

入浴車により訪問し、簡易浴槽を居宅に持ち込み、入浴介護に従事する専門スタッフ3名以上がその

サービス実施にあたります。そのうちの1名以上が看護職員であり、入浴サービスの前後にご利用者

の健康観察を行う安全で快適なサービスです。

 

★入浴車による訪問入浴介護サービスは、介護保険制度における在宅サービスの一つです。

 

▼訪問入浴サービスご案内(動画)

 

➡訪問入浴介護のご案内ページへ