2023.03.24

移動入浴車誕生と入浴福祉研究の歩み▶シリーズ第13回

移動入浴車誕生と入浴福祉研究の歩みでは、1972年の移動入浴車誕生からデベロが歩み続けた入浴福祉研究の歴史をご紹介いたします。

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今回の全国研修会回顧録は、1998年10月8日(木)と9日(金)の2日間、岩手県盛岡市の「ホテル東日本」で開催された第34回全国入浴

研修会の当時ホテルオークラ副社長であった故橋本保雄氏の基調講演「歩みいる者にやすらぎを・・・去り行く人にしあわせを~選ば

サービスの本質」を取り上げたいと思います。

さて、コロナ禍以前からオンラインでほとんどの物は買うことが出来るようになりました。そのようなことからサービスのあり方が大きく

ったと感じています。今から30年以上前、私はホテルに勤務していました。ホテルでは、ベルボーイ、フロント、中国料理やフランス

料理のウエイター、そして結婚披露宴など数々のサービスを経験しました。そんな経験を私は現在、お客様第一の考え方をもとに近未来の

創造に生かしています。

ところで、故橋本保雄氏は講演で、サービスとは心を添えること、と述べられています。

皆様、日々の訪問入浴介護提供において、心のこもった挨拶、そして洗髪や洗体において「かゆいところはありますか」また、「肩へシャ

をかけます」など言葉をかけてサービス提供をされていることと存じます。

寒暖差のある日が続いています。体調万全で日々の介護業務を進めていただきたいと思います。

 

▼橋本保雄先生の講演

 

§マニュアルどおりではサービスにはならない

皆さま方の介護という仕事もサービスです。サービスには代償がつきもので、無料ではありませんが、1000円のモノゴトを1000円で提供しても、サービスをした、とはいわないことは誰でも知っています。サービスとは、心だからです。しかし、こころにはカタチがありません。入浴の援助をしてさしあげる、というのも一種のカタチに過ぎません。サービスを受ける相手の心は一人ひとり違いますので、カタチを提供するだけでは、サービスにはならないのです。私たちも皆さん方と同様に、[サービスマニュアル]をもっています。しかし、それは、仕事をするうえでの基本的な取り決めにしか過ぎず、マニュアルどおりにやればサービスになるか、というとそうではないのです。お客様にマニュアルなど関係ありませんし、マニュアルどおりの当たり前のことをされても満足はしないでしょう。プラスαの[心]を添えなければ喜ばないのです。[心]というのは、サービスを提供する側も受ける側も、一人ひとりのアタマのなかにあります。ですから、同じサービスをされても、受け取り方はみな違ってきます。マニュアルどおりにしても、満足してくれるとは限らないのはそのためです。「お客さまはきっと満足してくれるはずだ」と思ってサービスをしても、お客さまによっては、嫌な感情をもつ場合もあるのです。

§サービスとは心を添えること

では、2000円のものを1000円で提供すればサービスでしょうか。これもサービスとはいえません。2000円のモノゴトを、4000円とか5000円の価値にして提供するのがサービスなのです。料理というものは、盛りつけが大切です。盛りつけが悪ければ、どんなに美味しく作ってもお客様は喜びません。次に、お皿やコップをテーブルに置く場合はどうでしょう。音をたてて乱暴に置いたとしたら、上手に盛りつけた美味しい料理も、それで台無しです。「お待たせしました」と言いながら、ていねいに差し出すのがサービスです。これを[添える]といいます。[プラスαを添える]ことができなければ、形式に終わってしまいます。[添える]のは結局[心]が発するのです。しかし、けっして難しいことではなく、皆さん方のこれまでの経験があれば、十分に[添える心]は発揮できるはずです。ぜひ、心を添えることに気を使ってください。

§技術が良くても品格がなければ失格

ブランデーに『VSOP』というのがあります。15年から25年も熟成させた上級なものです。この上に『エキストラ』というクラスもありますが、まずは皆さん方も『VSOP』になってください。『VSOP』のVは、ビクトリーでありバイタリティです。簡単にいえば「やる気」です。相手の心をつかむ気力です。Sは、スペシャリティです。より特別なサービスを提供しなければなりません。Oは、オリジナリティです。他の人には負けない、他の人が真似できない独自性です。Pは、パーソナリティです。いくら技術的に優れていても、人間性に問題があるといわれたら駄目です。人柄・人格・品格を身につけてください。

§疲れた人はねんごろにもてなす

サービスには鋭い感性が不可欠です。相手が嫌がることは、もちろんしてはいけませんし、相手が望むことを素早くキャッチしなければなりません。テレパシーのような能力が必要です。そのためには、すべての感覚が鋭敏でなければなりません。[俗人]は谷にいる人です。[仙人]は山の上にいる人です。谷底からは何も見えません。山からは、いろいろなモノゴトが見えます。常に全体を見渡しながら、相手の心が見えるようにしたいものです。私たちのホテルでは、「歩み入る者にやすらぎを 去りゆく人にしあわせを」をモットーにしています。この言葉は、旧西ドイツのローゼンブルグの街のゲートに掲げられていたラテン語を、画家の東山魁夷氏が訳した言葉です。旧西ドイツにも、日本の東海道と似た街道があります。その代表がロマンチック街道で、随所に宿場として発達した街ができました。ローゼンブルグの街もそのひとつです。ヨーロッパの街は城壁で囲まれて作られましたから、この街には東西南北のゲートがあります。そのゲートに書かれていた言葉なのですが、画家の東山氏が『馬車はゆっくり走れ』というエッセイを書いたときに、この言葉を訳して引用したのです。「旅人は、ねんごろにおもてなしをしなさい」との意味なのですが、いってみれば旅人が疲れている弱者です。見ず知らずの街で不安もあります。そのため、安心してゆっくり休んでいただき、出てゆく時は無事を祈るのです。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」という慣用語をいくら発しても、本当に気持ちが込められていなければ、お客さまは気分を害します。サービス業の慣用語ひとつでも、心から言えるようにならなければいけません。また、その時々の言葉が出るように、ボキャブラリーを豊富にしておくことも必要です。

§あいさつも時と場所を考える

サービスとは、常に相手の立場を考え動くことです。相手の喜びを感じたら、自分も「ああ…良かった」と喜べるのがサービスという業務です。私は四十年以上もホテル業に従事してきましたが、サービス業ほど面白い仕事はない、と考えています。相手に喜ばれることをやればいいのですから。[合掌]するの[掌]は、「たなごころ」とも読みます。[手のひら]です。[手の甲]を上にして[どうぞどうぞ]では、人は気分を害します。[たなごころ]とは、手と手を合わせる、すなわち心と心が通じ合う、との意味です。サービスは、相手と自分の心と心が結ばれることです。結ばれるの「結」は、「糸」と「吉」です。おたがいの心が通じ合って[しあわせ]を感じることです。ぜひ、おたがいが感動するサービスを心がけてください。

資料:入浴福祉研究第32号 1999年(平成11年)4月1日発行 掲載記事p.32-35より引用・抜粋

 

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訪問入浴介護は、3人(看護師、オペレーター、ヘルパー)1組で入浴介護を行うチームケアです。お互いの職種を把握する

とはもちろん、性格や考え方を理解することは生産性とサービスの質の向上のために大変重要です。

 

 

▶訪問入浴介護とは

 

在宅において、自力で入浴が困難な方を介助し入浴の機会を提供するものです。

入浴車により訪問し、簡易浴槽を居宅に持ち込み、入浴介護に従事する専門スタッフ3名以上がその

サービス実施にあたります。そのうちの1名以上が看護職員であり、入浴サービスの前後にご利用者

の健康観察を行う安全で快適なサービスです。

 

★入浴車による訪問入浴介護サービスは、介護保険制度における在宅サービスの一つです。

 

▼訪問入浴サービスご案内(動画)

 

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