2023.02.27

移動入浴車誕生と入浴福祉研究の歩み▶シリーズ第11回

移動入浴車誕生と入浴福祉研究の歩みでは、1972年の移動入浴車誕生からデベロが歩み続けた入浴福祉研究の歴史をご紹介いたします。

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今回の全国研修会回顧録は、2017年(平成29年)3月17日(金)に開催しました、第53回全国入浴福祉研修会(東京教室)の基調講演の

内容より取り上げたいと思います。基調講演講師としまして、公益財団法人日本訪問看護財団常務理事、佐藤美穂子氏に訪問看護のお立場

より『いま、医療・介護の連携がめざすべき未来』~訪問看護と訪問入浴介護を結ぶキーワード~と題して、「訪問看護とは」をはじめと

した活動内容、医療保険・介護保険制度の違い、医療と介護の連携の重要性について、大変わかりやすくご講演いただきました。

▼基調講演講師 佐藤 美穂子 氏

 

§訪問看護とは

訪問看護の定義を30年ほど前に作りました。まず本人が主体性を持って健康の自己管理と必要な資源を自ら活用し、生活の質を高めることを目指すのが目的です。そのために、健康を阻害する因子を日常生活の中から見出し、健康の保持、増進、回復を図り、あるいは疾病や障害による影響を最小限に留める。また、安らかな週末を過ごすことができるように支援する。そのために具体的な看護を提供し、健康や療養生活上の種々の相談にも応じ、必要な資源の導入、調整を図るというように定義をしております。

この定義を今も大事にしています。もちろん訪問看護の定義は、健康保険法と介護保険法の中に位置づけられています。健康保険法では、疾病や負傷により居宅においてとなっているのです。また主治医が、その治療の程度につき認めたものに限るとなっていますので、治療が必要な時に認めて初めて指示書が来るという制度になっております。

そして介護保険法も介護と介護予防の二つに分かれており、対象者が要介護かあるいは要支援者になります。介護予防の訪問看護の場合は、介護予防を目的としてということになっておりまして、厚生労働省で定められる期間にわたり行われる療養上の世話、または必要な診療の補助というところに違いがあります。

これを説明しますと、まずは、医療保険制度です。介護保険法と医療保険法では、介護保険法の方が優位に立っていますので、介護保険で訪問看護を行う人は、医療保険では行えません。介護保険の要介護認定を受けて、非該当者でも必要があれば医療保険でも看護を行えます。

もちろん小児とか40歳未満は介護保険の適用ではありまんので、そういう人は医療保険の訪問看護になります。これを受ける場合は、ケアマネジャーは必要なく、訪問看護ステーションでケアマネジャーの役割を果たしながら、ご利用者と主治医、訪問看護師と3者の関係で成り立っています。

訪問看護療養費と加算の仕組みは、4つの枠組みになっていまして、1つ目が訪問看護基本療養費と加算です。訪問看護基本療養費というのは、1回の訪問看護に対する報酬なのです。病院診療所から、訪問看護をしようということで看護師が訪問しますが、それに相当するものです。

さらに2つ目の枠組みは、事業所を運営していかなくてはならないので、その部分は訪問看護管理療養費で評価されています。これによって、機能強化型だったら1とか2があり、常勤職員が7人以上の場合は機能強化型1となります。看取り件数は20件以上、重症度の高い人を24時間体制で看取るとか、あるいは医療的ケアが必要な人たちが6人以上常時いるとか、そういう要件がありますが、従来型よりは1カ月当たり5000円高い報酬になっています。この5000円高い報酬で地域活動を行ったり、優秀な事務職員を雇って経営的に安定させたりということが可能になっています。この管理療養費というのは、保健医療機関の訪問看護にはありません。これば保健医療機関そのものが管理的に関わっていますから。訪問看護ステーションだけに管理療養費がついています。

介護保険制度の仕組みですが、要支援1、2だと地域包括支援センターのケアマネジャーが関わります。訪問看護ステーションは、まず主治医の指示書があり、それと同時に居宅介護支援事業者のケアマネジャーがケアプランに位置づける。あるいは地域包括支援センターが、ケアプランに位置づける。この4者の関係になって初めて介護保険の訪問看護が提供でき、その実績に基づいて報酬の請求ができるということです。

訪問入浴介護の研究報告書を見させていただいて、例えば長時間加算とか、医療的ケアが必要な管が入っているような人については特別介護加算とか、退院時共同指導加算、退院する時には必ずそういう医療的ケアがどうなのかとか一緒にカンファレンスをやったりしますのでそういう加算。またターミナルケア加算など、こういうのもあってもいいではないかという感想を持ちました。

訪問入浴介護の介護報酬の仕組は基本報酬が1243単位、プラス加算として、サービス提供体制強化加算、特別地域訪問入浴介護加算となっているので、それよりも要介護5が多いという入浴加算ですと基本報酬はもちろん高いのですが、併せて個別の加算というのもあってもいいのではないかというのが私の感想です。(※2017年(平成29年)3月17日(金)開催の基調講演内容になります。)

訪問看護ステーションの業務は医師の指示書に基づく訪問看護です。訪問入浴介護は指示書がありません。お聞きしますと医師の意見書のような形で、留置カテーテルのあるような人の入浴後のお世話に関わっているということです。それは訪問入浴介護ですからもちろん入浴というのは介護の療養上の世話としての独占業務ですから、指示書は必要ないと思います。ただ、留置カテーテルが入っているとか褥瘡のあと処置をしなくてはいけないという時にどうするのかということは、今後課題として多くなってくるのではないかと思います。

訪問看護は、医療保険で始まりました。介護保険制度にも入っております。医療保険対応と、介護保険対応の両方で全年齢層に対応しています。そういう意味では赤ちゃんからお年寄りまで、訪問看護は提供できているのですが、介護保険法が優位になっていますから、介護保険法で訪問看護を行う人は医療保険では行えません。しかし介護保険で要支援1から要介護5と認定された人でも、訪問看護だけは医療保険の世界にずっといるという人が実はおります。

要支援1から要介護5まで医療保険給付対象に移る人は、末期の悪性腫瘍等厚生労働大臣が定める人、精神科訪問看護の人も介護保険ではなく医療保険です。認知症は除きます。さらに医師が急性増悪と診断したり、いよいよ看取りだとか状態が非常に不安定な時に、特別指示期間の指示書というのを出すのです。そうすると2週間だけ訪問看護に移ります。ただ褥瘡がひどい場合は、2週間ではなく4週間、医療保険に移ります。

§訪問看護師の活動

訪問看護ステーションの看護師の活動は、QOLとQODの向上です。QOLはクオリティオブライフです。QODはクオリティオブデスで、死の質という言葉が使われるようになっています。そういうことの向上を目指して健康状態を観察し、疾病や介護状態の予防、悪化防止、遅延をする。また、在宅移行を支援する。そして在宅療養支援で、緊急対策や24時間体制を含む。また在宅看取り等を行うとうことで、本人・家族・介護職員・ケアマネジャー・医師等医療従事者と協働してチームで行います。

本人・家族もチームメンバーです。本人・家族はやってもらう人でなく、本人・家族に最大限に力を発揮してもらって、一緒になってやっていくという関わり方です。訪問看護ステーションは、医療保険だと30分から1時間半です。介護保険だと20分30分と刻みがあります。そういう中で一緒になって、より効率的に効果的にやっていくことが必要です。訪問看護の場合は1時間30分以上の場合は、延長時間が加算されるようになっています。

訪問看護は予防的視点でまず考えます。心身の機能障害や疾病の予防・悪化防止・維持、高齢者夫婦世帯・独居高齢者世帯の健康生活をどう維持していくかということを考えます。褥瘡ができてからでは遅いというのが私たちの考えなのです。ところが指示書は治療が必要と認めたものに限るということになっていて、褥瘡ができてから指示が出るような状況にあります。そこは変えていかなくてはならないかと思います。

皆さんの訪問入浴介護も、まさに予防的視点だと思います。1週間に2回、3回お風呂に入る。訪問入浴介護によって、皮膚の状態が観察でき、また皮膚の血行が良くなります。入浴によって褥瘡ができないという、本当に予防的な活動だと思っています。

また地域活動として、住民に対する情報提供、健康相談、介護相談などを始めています。訪問看護ステーションそのものが相談できるコーナーを設けることという望ましい規定があり、地域の人たちが気軽に立ち寄って、お薬のこと自分の健康について相談できるようになっていますので、そういうことを含めてこれからは考えていくことが必要だと思います。一次予防で、セルフケアをしっかり強化していくということです。

§グリーフケア

人生の最終段階における訪問看護師の役割についてです。病状の観察をし、療養上の看護や医療的な処置や緩和ケア、麻薬等を使った疼痛コントロール、そういうことをしながら家族を支援し、多職種と連携しています。自宅で最期まで過ごしたいという希望をできるだけ叶えたいと思うのですが、実際は本人の希望よりも家族の希望で在宅死ができないのです。そこをなんとか家族も合意形成ができるように持っていく、黒子的な役割も訪問看護は行っています。

最期をそこで看取ったという時にその部屋が、一つでもいいからいい思い出、本人の笑顔が思い浮かんでくる。そういうことができるようにしたい。心地よさ、尊厳が守られる環境整備、笑顔の思い出、それをとても大事にします。それがグリーフケアにもつながっていくのです。家族が大事な人を失ったあとに「あの笑顔、ここで療養していたな」と、笑顔や穏やかな寝姿を思い出すことによって、これはグリーフケア、悲しみに暮れる、悲嘆のケアにつながっていきます。そこをとても大事にしています。

続いて、訪問看護ステーション利用者の介護度です。要支援1、要支援2では、要支援2が多い。介護度1~5では要介護2が多く、これがここ1、2年の傾向です。以前は要介護5が一番多く、続いて要介護4、それから要介護2でした。ところがここ1、2年に要介護2というのがだんだん多くなってきて、割合では一番多くなっています。訪問看護ステーションの、大きな変化として起こっていることです。

ステーション利用者の傷病別内訳としては、循環器系の脳血管疾患の後遺症の人が多くの心疾患の人もいます。8割ぐらいは脳血管疾患で、心疾患が2割ぐらいです。最近は心筋梗塞等の後遺症で、点滴をされる人も増えてきました。認知症、悪性新生物も増えてきました。認知症、悪性新生物も増えてきています。そして神経系の疾患、ALSの人が多いのですが、こういう人に対しては訪問入浴介護も一緒に行っております。

§訪問入浴介護と訪問看護を結ぶキーワード / 認知症

お互いに共有できるところから始めていきます。まず一つは75歳以上の人口の推移です。私たちは高齢者に対応することが非常に多いのです。高齢者の絶対数が増えているのは東京です。約200万人になります。それから大阪府、千葉県、神奈川県など、都市圏に高齢者は増えていきます。

もう一つは、認知症です。高齢になると認知症も多くなってきます。私たちも認知症ケアについては、一緒になって関わりますが本当に大変です。一つ一つ説明してもすぐに忘れる、いろいろなところに張り紙をしたりしています。

サービス別要介護者利用者数の構成割合を、訪問入浴介護と比較してみました。訪問入浴介護は要介護5が50%を占めています。重度で何らかの医療的ケアが必要な人が増えてきているということになります。

これからは、多職種で一緒に在宅療養の支援をしていく必要があるということになりますが、入院・退院の時、日常の療養生活、看取りなど全体的に訪問看護師が顔を出しているのです。訪問入浴介護をされている人との連携は、なくてはならない事と思います。私たちはケアの実践者です。ケアマネジャーは社会資源をどう活用していくかというプランをつくりますが、ケアの実践者同士のつながりということで、とても大事だと思います。

§質疑応答より

質問者:加算の説明があったのですが、ぜひどうにか動いてもらえないかと思っております。やはりケアマネジャーから、いろいろな無理難題があります。看護師がいるのだからできるでしょうという感覚で、いろいろ要望されるのです。会社としてみれば、やってもやらなくても価格は同じという状況ですので、そこに加算がつくようになるのであれば嬉しいです。自社の看護師も半分以上がいるのですが、訪問入浴介護のための看護師の研修というのが、いくら探しても見つからないのです。訪問看護師の研修の中に参加してよいものなのかということも感じています。ぜひそういったところを、考えていただければと思っております。

佐藤氏:先ほど加算のところで、基本報酬の説明をしましたが、看護師としてそこに勤めていても介護職員という位置づけです。そういったところをクリアしていくかというところが一つあります。看護師の資格を持っていればそれはできなくはないのですが、訪問入浴介護というサービスそのものの定義とか、そういうことを見ますと介護職員は続け、でも看護師の資格は持っているといいように使われているというそんな感じがします。

質問者:看護師は介護職員ではないですよね。

佐藤氏:訪問入浴介護サービスというサービスなのです。看護師は配置基準にはあるわけです。訪問入浴介護という定義では介護なのです。でも看護師が位置づけられていて、看護師がやることについての評価がないということです。何かいろいろ工夫して、成果とか効果とか内容について出すと、特別加算のようなものができるかどうかですね。データを集めるとかいう活動はされたことはないですか。

質問者:今のところはないです。

佐藤氏:私たちは、要望書を出すために10年、20年、これを取りたいと思えばそれに対して全国的な調査をして、これだけやっているのだからとか、この評価はこんなに低いだからこれに加算をつけて欲しいとか、要望書を出しているのです。看護連と言って、看護団体49団体の連合があり、そういうところで要望を出しているのです。もし訪問入浴介護として要望を出せるのであれば、今ですよね。そういう対応もあるのかもしれないと、いまお聞きして思いました。確かに入浴設備が必要で、デイサービスではなく自宅でお風呂に入りたいという本人の意思を尊重したサービスでもあり、医療的なケアとか看取りの対応ということもあり、そのくらいは加算していただかないと、私は報告書を読んで分かりました。ご意見ありがとうございます。

佐藤氏:なかなか難しいところです。医療的ケアということで、どんどん広がっていく。これは重度の心身障害児についてもそうなのですが、本当いその辺りの整備が必要なのではないかと思います。

佐藤氏:そしてもう一つ、通所介護、介護療養の通所介護や訪問介護はこれから総合事業になり、市町村に移っていきます。医療給付から外れて、住民全体の通所介護あるは訪問介護になっていきます。

§医療介護総合確保推進法

医療介護総合確保推進法は、社会保障制度を持続させるにはどうするかということで、19本ほどの法律が一括して改定されたのです。介護報酬とか診療報酬では対応できないようなことを、904億円の新しい基金、消費税の基金があるのですが、これを使って、地域に見合ったサービスに対応していくということです。皆さんもいろいろとアイディアを出すことが必要だと思います。

資料:入浴福祉研究第51号 2017年(平成29年)6月30日発行 掲載記事p.6-17より引用・抜粋

 

さて、訪問入浴介護のご利用者は、要介護度が高いですので、入・出浴はバイタルチェックを行います。その際の目安について、改めて

触れさせていただきます(下図参照)また、デベロ老人福祉研究所が令和3年度に実施しました老人保健健康増進等事業「訪問入浴介護

の実態に関する調査研究事業」のアンケート調査より、『訪問入浴介護と訪問看護の併用率』についてのデータを掲載いたします。

デベロ老人福祉研究所では、2015年9月1日に「訪問入浴介護ハンドブック」~在宅医療で多い疾患と訪問入浴介護の安全活用~を発刊し

ております。

 

★入浴利用者の健康状態の把握

 看護職は、入浴直前に必ず健康状態について表2-1-7「健康状態の観察項目」に掲げる内容について確認を行います。この際、

    利用者の健康状態は、その時の状況に左右されることを十分に理解し、測定した数値だけで判断することは避け、総合的な判断を

    行うようにしなければなりません。

 

出典:一番ケ瀬康子監、デベロ老人福祉研究所・日本入浴福祉研究会編『訪問入浴介護の理論と実践』-一橋出版、2000年、p.104を一部改変

(※上記の図は目安につき、主治医に確認してください。)

 

 

★訪問入浴介護と訪問看護の連携について

(令和3年度老人保健増進等事業「訪問入浴介護の実態に関する調査研究事業報告書p.47より抜粋」

 

▼画像をクリックしてご案内動画をご参照ください。

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訪問入浴介護は、3人(看護師、オペレーター、ヘルパー)1組で入浴介護を行うチームケアです。お互いの職種を把握する

とはもちろん、性格や考え方を理解することは生産性とサービスの質の向上のために大変重要です。

 

 

▶訪問入浴介護とは

 

在宅において、自力で入浴が困難な方を介助し入浴の機会を提供するものです。

入浴車により訪問し、簡易浴槽を居宅に持ち込み、入浴介護に従事する専門スタッフ3名以上がその

サービス実施にあたります。そのうちの1名以上が看護職員であり、入浴サービスの前後にご利用者

の健康観察を行う安全で快適なサービスです。

 

★入浴車による訪問入浴介護サービスは、介護保険制度における在宅サービスの一つです。

 

▼訪問入浴サービスご案内(動画)

 

➡訪問入浴介護のご案内ページへ