2022.10.20

移動入浴車誕生と入浴福祉研究の歩み▶シリーズ第6回

移動入浴車誕生と入浴福祉研究の歩みでは、1972年の移動入浴車誕生からデベロが歩み続けた入浴福祉研究の歴史をご紹介いたします。

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今回は、1981年(昭和56年8月6・7日実施 於「日本赤十字社 本社」)開催の第11回全国入浴福祉研修会の記録から元中央

大学文学部教授、元淑徳大学学長の那須宗一先生の講演「寝たきり老人の生きがい」を取り上げます。

 

▼那須 宗一先生の講演

 

 

§地域福祉の重要性

もう一つの救いが、日本は同居率が多いことです。同居の形態を変えないと、老夫婦や一人暮らしがもっと増加してしまいますが、二つの世代が一緒にいることで、老人は若い人の、若い人は老人の気持を理解できます。同居できなくなると、老人はドラマの中だけになり、断絶がすすんでしまいます。たとえ別居が常識となっても、老人問題は国や自治体だけで解決できるわけがありませんから、よけいそう思うのです。

国や自治体は、社会保障の対象者が何人いて、いくらでやるかといった量的な基礎的条件をつくります。しかし、老人は個々の状況ですべて異なりますから、一律に寝たきりはこうすればいいとは言えません。個別的な対応ができるのは、やはり家庭です。WHOでも1970年に「プライマリーケアー」の重要性を宣言しています。日常的で直接的なケアーということです。そうしたケアーができる「プライマリーグループ」は家族です。

しかしながら、家族の人は福祉の専門家ではありません。そこで家庭内の老人に対処するために、在宅福祉を専門に助言したり補足する人が必要になります。これがそれぞれの地域にいる専門家であり、みなさん方です。いままで、福祉というと国や自治体か、それとも家族か、という見方しかされませんでしたが、行政と地域と家庭が一体となって福祉が実現できるのです。地域はその中で、両者をコーディネイト、中継ぎをする大事な役目をもっています。

 

資料:第11回全国入浴福祉研修会記録 1981年(昭和56年)8月6・7日実施 於「日本赤十字本社」より

 

1981年(昭和56年)の日本の人口は1,177億人。高齢化率は9.30%でした。

令和4年(2022年)2月1日現在の確定値から日本の総人口は1億2,519万人であり、2022年版高齢者白書からですが65歳以上

人口は3,621万人で高齢化率は28.9%とのことです。

また2021年の令和3年版高齢社会白書(全体版)から、1980年の65歳以上の高齢者がいる世帯は8,496。一方、2019年は

25,584です。そして全世帯に占める65歳以上の高齢者のいる世帯の割合は、1980年24.0%で2019年49.4%。尚、2019年の

全世帯数は5,178万5000世帯ですから、約半数の世帯に65歳以上の高齢者がいることになります。このようなことから1981

から2021年の40年間で日本の世帯構造は大きく変わりました。

ところで今から30年以上も前のことですが、私はオペレーターとして訪問入浴介護に従事していました。水戸市を中心に近

の町村から委託を受けて訪問入浴介護をサービス提供しておりました。訪問するお宅のカレンダーにはほとんどといって

くらい訪問入浴のサービス実施日にはなまる印がついていました。

今でも鮮明に記憶しておりますのが水戸市内の高齢ご婦人宅でのことでした。確か2回目のサービス提供のことだったと思

ますが、洗体が終了してシャワーで石鹸を流そとすると、ありがとうと涙ぐみ私の手を握って大変感謝されました。私は

これまでに経験したことのない程感激しました。そのご婦人は、入浴の喜びはもちろん、洗髪や背中そして足の指のまで洗

ってくれたことに大変な喜びを感じたようです。

実は、デベロに入社する前の私の仕事はホテルマンでした。フロントやレストランサービスそして婚礼やパーティーなど数々

のサービスを経験しましたが、あの時のご婦人からの「ありがとう」は私にとって格別の思いがあります。

いくつになってもどんな状態でも「お風呂に入ってさっぱりしたい」、そんな願いを実現するめに、訪問入浴介護従事者の

皆様のご活躍をお祈り申し上げます。



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訪問入浴介護は、3人(看護師、オペレーター、ヘルパー)1組で入浴介護を行うチームケアです。お互いの職種を把握する

とはもちろん、性格や考え方を理解することは生産性とサービスの質の向上のために大変重要です。

 

 

▶訪問入浴介護とは

 

在宅において、自力で入浴が困難な方を介助し入浴の機会を提供するものです。

入浴車により訪問し、簡易浴槽を居宅に持ち込み、入浴介護に従事する専門スタッフ3名以上がその

サービス実施にあたります。そのうちの1名以上が看護職員であり、入浴サービスの前後にご利用者

の健康観察を行う安全で快適なサービスです。

 

★入浴車による訪問入浴介護サービスは、介護保険制度における在宅サービスの一つです。

 

▼訪問入浴サービスご案内(動画)

 

➡訪問入浴介護のご案内ページへ

 

 

 

『入浴』と『看護・介護』の力の集結!!訪問入浴介護サービスの力

訪問入浴介護のサービス提供時には、入浴介助に伴って様々な付帯的なサービスが行われています。

 

全身観察

身体の状況を確認する最大の機会

看護師を中心に褥瘡等の早期発見・予防など、あらゆる観点から確認します。

 

 

生活支援の側面
寝具等ベッド環境の整備
離床する際に、シーツ、枕カバーなどの交換が行えます。不衛生になりがちなベッド周りも清掃して、環境を整えることができます。

 

 

 

 

身体介護の側面
ご家族へのアドバイス
寝たきりである利用者への清潔な下着や着衣の交換はもちろんのこと、「スキンケア」や「体位の交換」といったご家族への適切なアドバイスも。

むくみや拘縮の緩和、リハビリ要素も

入浴中は温熱作用、浮力・粘性作用により関節も動きやすくなりますので、状況によりマッサージなどを行う場合もあります。

 

全身の整容と向き合う

入浴で清潔の保持はもちろんですが、洗顔、ひげそり(電気シェーバーにて)や爪切り(疾患のない爪)など、全身の整容を考えてサービスが実施されます。

 

◎活用例:訪問入浴介護が褥瘡対策に有効な理由

・入浴の力

洗浄により、創部に残った薬剤、膿、過剰の滲出液を洗い流すことがでる。

血行促進が期待でき、代謝の活性を促進し治癒力を高める。

・人(介護)の力

看護師を中心としたチームでの全身観察。

ベッド周辺の環境整備(シーツ交換など)による衛生管理や、家族への助言・負担の軽減。

浴槽や機材の洗浄・消毒を徹底。感染症伝播のリスクが低い。