2024.06.27

◇実践事例特集◇地域包括ケア実践事例:尊厳ある終末期を過ごす医療と介護の連携

【実践事例特集】では、デベロ老人福祉研究所がこれまでの研修活動で発表された事例等を基に、改めて

    訪問入浴介護と照らし合わせてご紹介します。

                                                                 

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2012年(平成24年)2月25日(土)に開催しました第47回全国入浴福祉研修会の基調講演におきまして、「尊厳

ある終末期を過ごす医療と介護の連携」と題し、医療法人社団三育会 理事長の英 裕雄氏にご登いただきました。

今回はその時のご講演内容よりご紹介させていただきます。

 

私は16年前から東京・新宿を中心に在宅医療も取り組んでいる医師です。現在は新宿と銀座、本郷、麻布にクリニックがあり、

4ヶ所を拠点に都心で重症度の高いがん末期の方や人工呼吸器を必要とする患者さんなどを中心に在宅医療を行っております。

今現在、常勤の医者は8人、全体で40人ほどのスタッフでそのような患者さんを支えています。

訪問入浴サービスについて、私なりの所感雑感を申し上げさせていただくと、東京でも利用者さんにとって嬉しがられるサー

ビスの第1位なのではないかと思います。本当にお風呂に入ることを楽しみにしています。往診にしても「今日はお風呂に入

るので先生、数時間外してもらえませんか」と言われることがあります。ほかの訪問介護とか訪問サービスではなく、訪問入

浴が優先されるのです。利用者さんには、大変喜ばれるサービスです。

私も初めて見たときはびっくりしました。お風呂をマンションの3階や4階まで持ち上げて、しかも短時間でお風呂に入って

もらえるシステムです。これが広がるのは体を清めるばかりでなく、利用者さんにとって体調維持にも体質改善にもつながり

ます。

サービスをする方が気にされているのは、ひとつは感染症の患者さん、もうひとつはバイタルが変化したとこにどうするのか、

尿道カテーテルの場合はどうするのかということなどですが、私としては感染症は考えにくいです。お風呂に関して、感染症

は考えていません。

バイタルの変化についても要介護の方は、例えデイサービスに行っても何か変化があることはあります。デイサービスやどこ

へ行っても何かがあるのです。何か変化があったときに対応するために、あらかじめコンセンサスを作っておくことが大切だ

と思います。これば主治医の仕事だといえます。

尿道カテーテルなどについては、看護との連携が必要です。入浴前に、看護師さんに抜いてもらえれば良いと思います。

これから介護のことをお話したいと思います。尊厳ある終末期を過ごすためには、医療よりも介護が非常に重要だと考えます。

そのために介護を深く掘り下げたいと思います。尊厳ある終末期をどのおうに過ごすのかが大切な点です。

いくつか事例を紹介させていただきます。

▮21世紀は高齢化の世紀

20世紀は人口急増の世紀でしたが、21世紀は「高齢化の世紀」になります。明治維新以降、日本は急激に人口が増えました。

一方現在は人口が減少し始めています。それが、21世紀の後半には明治維新と同じような人口になってしまいます。日本は、

かなりの速度で人口が増加し、急激に減少してく状況にあります。

そのうち総人口に占める65歳以上、75歳以上の数が問題をなっています。21世紀を過ぎれば平均化するのですが、65歳以上、

75歳以上が増える時期が来ています。さらに人口ピラミッドの変化をみると、昔は生産人口の8人から10人で1人のお年寄り

支えていたのが現在が2.3人に1人で、将来は1人が1人を支えなくてはならなくなります。その中で年代別年間死亡者数の推

をみますと、昔は各年代でほぼ均等に亡くなっていたのですが、今はみんなが天寿を全うする成熟したうれしい時代になっ

といえます。しかし、それを喜んでいる人は少ないのです。

これから高齢化問題を考えますと、お年寄りが増える地域と、それほど増えない地域とがあります。首都圏などの都市部に、

齢者が集中しているのが分かります。やはり東京など在宅サービスなどが少ない都市部で高齢者数が増えております。死亡

した場所をみると1951年には自宅で亡くなった方がほとんどですが今は80%以上が医療機関で亡くなっています。これば死

というものが生活の中から医療へとシフトしていったことです。

昔は家の中で出産して、家の中で死を迎えていました。このままでいくと病院を増やさなければなりません。しかし病院は

増やせない時代です。病院では看取ることができなくなっています。

東京の中心部を見てみますと、介護保険認定者は増えていません。郊外の地区で多少増えています。千葉や埼玉など爆発的

に増え、要支援・要介護の高齢者の増加もドーナツ化の傾向になっています。

では東京の都心部で何が問題かと言うと、全国的にも言えますが一人暮らしの世帯が増えていることです。新宿区の65歳以

上の一般高齢者世帯を調べると、26%が一人暮らし世帯で、夫婦のみ世帯が37%、配偶者以外の同居人のいる世帯が35%と

なっています。さらに80歳以上、90歳以上を調べると一人暮らしの世帯の割合はもっと増えていきます。後期高齢者の独居

は増えているのです。

在宅医療に関しては、その制度は古くて昭和40年代からあり、平成になって老人訪問介護制度が創設されました。在宅医療

行為の実施件数の推移をみますと、平成3年から比べると平成15年には大きく伸びています。私が開業した平成8年は今の半

分以下でしたが、現在は在宅医療を行うのが当たり前になってきているのです。

在宅療養支援診療所ですが、現在は訪問看護や24時間体制など随分と進んでいます。かといって自宅で生活できるかという

とそうでもないのです。ここからは介護の問題になってきます。

介護状態になる理由を探っていくと64歳までの若い人は脳卒中やパーキンソン病、脊椎損傷、リウマチなどで占められてい

ます。これは自己予防などで防ぐことも可能です。若い人は疾病や事故によるものが多いのです。ところが65歳以上になる

と高齢による衰弱、転倒・骨折など加齢によるものが多くなります。

▮介護の総量について

人生においてどのような介護量が必要なのかという、介護の総量という概念的なものをみてみると、生まれたばかりは親に

みてもらいますが、少しずつ自分で服が着られるようになり、身の回りのことができるなど自立していきます。やがて、就

職、定年までは生活も社会も自立していきます。しかし、年齢を重ねると自分で身の回りのことができなくなる。そこから

介護というものが始まっていき、ご飯を作ってもらえれば食べられるなど徐々に本人の自立性が少なくなっていき、介護の

重みが増していくことになります。これは幼いことの親から受ける養育と同じです。

そのように介護の重みの部分がその人の人生の総介護量になり、だれかが補ってやらなければなりません。大体のお年寄り

は自分でコントロールできるとは思ってはいません。ただ、その人の尊厳ある介護、尊厳ある最期を迎えてあげるためには、

総介護量をマネジメントすることこそが大事だと思います。

それでは総介護量は何によって規定されるかを考えてみますと、ひとつは疾病です。がんは自立度が高いまま推移しますが、

立度が少なくなると亡くなるまでの期間が短いのです。ですからピンピンコロリに近いものです。一方、心・肺疾患の場

合は治ったり悪くなったりを繰り返します。認知症や老衰の場合はゆっくりと自立度が減少していきます。そういった場合

の総介護量は相当なものになるのです。その総介護量をだれが担ってくれるのかと言いますと、ひとつは介護保険などの公

的介護です。要支援1から要介護5まであります。医療保険による訪問介護もありますが、多くは家族、私的介護が担ってい

るのです。そこに皆さんの行っている訪問入浴サービスがあります。医療行為が総介護量を大きくしたり小さくしたりしま

す。その中で胃ろうは絶対的介護量を増大化させる可能性があります。

▮介護の種類と内容

介護の種類には生活介護、身体介護、医療的介護があります。しかし、一人暮らしの人が訪問介護を受けて、入浴サービス

を受けて、訪問看護を受けるためには、私は総介護量を減らすしかないと思います。なおかつ医療的介護と身体的介護を結

び付けないようにしなければいけません。尊厳ある最期を迎えるためには総介護量を減らしながら負担を軽くして最期を迎

えていただくのが結論となります。では介護内容の変化はどのようになるかというと、移動能力が低下して身体介護が必要

とされます。さらに食事摂取機能が低下して吸引や点滴、胃ろうなど医療的介護が増加します。このときこそマネジメント

が必要です。ケアプランよりも大切です。そして心肺機能の低下に伴い、多くは緩和的対応がとられることになります。そ

の際に、家族はあらかじめコンセンサスを作っておくことが必要です。私は、できるだけ医療機関にかからないということ

も必要と考えます。その人が質の高い生活をするために、その時にきちんと主治医に譲り渡しができるかが重要です。

今後の医療・介護の連携の展望は、従来は家族介護者がいる場合が多く、家族介護者中心の連携がありました。今後は訪問

看護など何をサービスできるかを考えていきたいと思います。

▮4つの事例紹介

次に4つの事例を紹介します。人が死ぬのはどのような風景なのかの参考になれば幸いです。

             

 

                 

 

                 

この方の場合は要介護3で独居高齢者に多いパターンです。一人でトイレに行けなくなった時が、在宅介護の限界です。独居

生活から施設、さらに療養病院で亡くなるというのはゴールデンパターンと言えます。典型的な事例と言えるでしょう。

 

                 

 

                 

 

 

この方の場合は治療を断固拒否され、親族にもそのようにはっきりと意志を伝えていました。このケースでは➀本人の希望

の明確化 ②反対しない親族がいた ③私のように無理やり入院させない、いい加減な医者がいたというものですが、もう

ひとつ大切なポイントは本人が重度の身体介護を避けていたことです。私の「せめてオムツでも」ということもさせてくれ

ないのです。これは家族の負担が極力少なくて済んだということです。

 

                 

 

                 

 

                 

 

 

老老介護の場合は、周りの支えが大切になります。無理なことはしたくないと言いました。リハビリもやっていましたが夜

眠れなくなり、睡眠薬を使っており、夜せき込み始めるようになったのです。痰の吸引にしても、おばあちゃんができるよ

うにするため、毎日のように往診に通いました。その後、私は睡眠薬を切りましたが、老後の介護を支えるのは、この介護

するおばあちゃんを支えるのがターミナルケアのポイントなのです。そのうち食事が取れなくなりました。胃ろうという方

法も勧めましたが、点滴をさせるのは無理なのですが、徐々に慣れていくことが必要です。だんだん弱っていく人を介護す

る人の周りを支えるのが必要です。このケースではおじいちゃんが「無理をしないで」と言っていた。その人の思いをなし

遂げたという思いが大切です。

終末期に大切なのは本人の意思の明確化です。

 

            

 

            

 

            

 

              

 

幸せな家族の例です。娘もその夫も協力していました。介護者が父親の葬儀の後に言った「父親移乗の介護をいつか夫にするから、そのときはよろしくね」と言われた言葉は、次につなげる介護の在り方を示しています。訪問入浴サービスをしてあげよう

という私的介護の例はかなりあります。でも実は1、2、3例目が多いのです。これは恵まれたケースです。だから私たちは恵

まれた事例だけで判断してはいけないのだと思います。これからの人がこのようにもっともっと幸せになるために考えなければ

なりません。

 

 

※出典:入浴福祉研究 第45号(2012年(平成28年)7月発行 編集・発行所:デベロ老人福祉研究所/日本入浴福祉研究会事務局

 

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訪問入浴介護のサービス時には、事前にバイタルチェックを行います。以下にバイタルサイン測定時の注意点を掲載

しますので、お役立てください。

 

出典;老年看護ぜんぶガイド 八島 妙子著(株)照林社 (P.112より引用)

 

▲出典:訪問入浴介護の実践マニュアル「高齢者のからだのしくみとお風呂の効果編」株式会社デベロ

 

▲出典:訪問入浴介護の実践マニュアル「高齢者のからだのしくみとお風呂の効果編」株式会社デベロ

 

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訪問入浴介護は、3人(看護師、オペレーター、ヘルパー)1組で入浴介護を行うチームケアです。お互いの職種を

把握することはもちろん、性格や考え方を理解することは生産性とサービスの質の向上のために大変重要です。

 

 

▼訪問入浴サービスご案内(動画)

 

➡訪問入浴介護のご案内ページへ

 

 

『入浴』と『看護・介護』の力の集結!!訪問入浴介護サービスの力

訪問入浴介護のサービス提供時には、入浴介助に伴って様々な『付帯的なサービス』が行われています。

 

全身観察

身体の状況を確認する最大の機会

看護師を中心に褥瘡等の早期発見・予防など、あらゆる観点から確認します。

 

 

生活支援の側面
寝具等ベッド環境の整備
離床する際に、シーツ、枕カバーなどの交換が行えます。不衛生になりがちなベッド周りも清掃して、環境を整えることができます。

 

 

 

 

身体介護の側面
ご家族へのアドバイス
寝たきりである利用者への清潔な下着や着衣の交換はもちろんのこと、「スキンケア」や「体位の交換」といったご家族への適切なアドバイスも。

むくみや拘縮の緩和、リハビリ要素も

入浴中は温熱作用、浮力・粘性作用により関節も動きやすくなりますので、状況によりマッサージなどを行う場合もあります。

 

全身の整容と向き合う

入浴で清潔の保持はもちろんですが、洗顔、ひげそり(電気シェーバーにて)や爪切り(疾患のない爪)など、全身の整容を考えてサービスが実施されます。

 


移動入浴車デベロバ4カは
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移動入浴車デベロバスカのご紹介 ~その機能と用途