2019.03.29

「入浴」がもたらす質の良い睡眠とは

― 「デベロ老人福祉研究所」代表理事 大井田 隆の研究から ―

〇高齢者の不眠の主な要因

加齢に伴う生体リズムの変化

加齢に伴い生理機能が徐々に低下するため、必要とする睡眠時間が短くなると言われています。
例えば夜8時に寝て夜中の2時に目が覚めたとしても、6時間は寝ているので、睡眠時間としては十分取れていると言えますが、睡眠自体が浅くなることで、日中に眠気をもよおし昼寝が増える傾向にあります。昼寝増えることで、夜に眠れなくなるという悪循環につながります。

 

トイレが頻回になる

加齢に伴いトイレが近くなるため、夜中に目を覚ますことが多くなります。

 

「足腰の痛み」や「運動量の減少」

足腰が弱り痛みが出やすくなることで、目を覚ますことが多くなります。また、外出が減ったり、運動量がが少なくなることで、不眠がちになる傾向があります。

 

薬の服用による不眠

加齢とともにお薬を服用することが多くなった場合、お薬に睡眠を妨げる成分が含まれているために、不眠が引き起こされる場合もあります。その場合は、薬を処方してもらった医師へ相談することが必要です。


●「入浴」で質の良い睡眠をえるポイント

「深部体温を」上げることが効果的!!

体温には、体の内部の体温「深部体温」と、手足の温度「皮膚温度」の2つがあります。

健康な人の場合、入眠前になると手足が温かくなります。これはいったん皮膚温度を上げて、手足にたくさんある毛細血管から熱放散することで、効率的に深部体温を下げているからです。深部体温は覚醒時には皮膚温度より2度ほど高いのですが、睡眠時になると0.3度ほど下がって皮膚温度との差が2度以下に縮まります。

入眠に大切なのは皮膚温度と深部体温の「差を縮める」こと。そのためにはまず皮膚温度を上げ、手足から熱放散して深部体温を下げる必要があるのです。

 

深部体温と皮膚温度の差をしっかり縮める方法として有効なのが「入浴」!!

入浴はその深部体温を効果的に変化させるのに最適な方法です。

スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の実験データでは、40度のお風呂に15分入った後で深部体温を測定すると、およそ0.5度上がりました。

この 「深部体温が上がる」ということが重要で、深部体温は上がった分だけ下がろうとする性質があります。入浴で深部体温を意図的に上げれば、入眠時に必要な深部体温の下降がより大きくなり、熟眠につながります。

入浴ができない時は、「足湯」で足の血行を良くして熱放散を促せば、入浴と同等の効果が得られます。寝る直前にお風呂に入ると、寝ようとしても体温が下がらず、逆に寝つきにくくなってしまいますので、夜遅い場合などは足湯が効果的です。